===伊勢神宮とマーケティング===
伊勢での仕事があったので、少し時間を作って、神宮(正式な呼び名は「伊勢神宮」ではなく修飾のつかない「神宮」なのですね)にお参りに行ってきました。深い緑に囲まれた、一種独特の神聖な雰囲気に浸ると、身も心もさっぱりしますね。
神宮では平成25年に行われる「遷宮:せんぐう」(20年ごとに社を隣の土地に移し変える古来からの伝統)の準備がすでに始まっていました。その遷宮に関するお知らせが、神宮内の何箇所かに掲示されているのですが、もちろん寄付(奉賛:ほうさん)のお願いも記されています。「遷宮造営資金ご奉賛の受付は祈祷所にて・・・」という文面なのですが、この文面からすると、少なくとも100万円単位での寄付が必要なんだろうなぁ、という感じがしました。念のため奉賛受付窓口で「いくらからなのでしょう?」とたずねたところ、なんと「お気持ちですから、1000円からお受けしております」とのことでした。「なんだ、そんなに気負わなくていいんだ~」と言うことで、心ばかりの額を収めてきました。すると、奉賛の礼状、神宮に関する小冊子、特別参宮章(これを提示すると一般の人よりも御神体に近い場所でおまいりできます)を頂きました。その冊子を読んで初めて知ったのですが、伊勢神宮といえども、戦後は一宗教法人として独立採算で運営がなされているのだそうです。つまり、国からの補助などは一切ない、ということですね。内宮、外宮をはじめとして、約120の社と、広大な敷地、そして600名を超える職員を、自己財源だけで運営しているわけです。これは、立派な経営ですね。
そこで思ったのが、「神宮ではマーケティングということを考えているのだろうか」ということです。利益追求をしていただく必要はないのですが、日本の文化遺産を後世に残してゆくというのは重要なことです。そのためには、神宮の建築物や儀式などが存続できるような経営努力が必要なはずです。したがって、やはり企業と同じように「売れ続ける=参拝者が増え奉賛が増える」ための仕組みを考える必要があると思いました。そういう観点で考えてみると、「お札」というのはリピート客を確保するのによくできている仕組みだと思います。でも、もっといろいろなマーケティング的発想があってもいいのではないかと、考えてしまうところがコンサルタントの性でしょうか(笑) 例えば、先述の「造営資金の奉賛」です。「1000円からお受けします」とか「特別参宮章を差し上げます」といった内容をどこかに掲示するだけで、ずいぶんと奉賛してくれる人の率は高まると思います。あれだけの参拝者(年間650万人)がいるのですから、大きな額になるでしょう。造営資金に奉賛した人の心理としては、「できあがったらぜひ見にきたい(:自分の寄付が使われているのだから)」となりやすくなります。したがって、リピーターが増える可能性が高まります。そして、その次の遷宮の際のDMを出す母数が格段に増えるわけです。また、神宮といえども、お願いすれば御神楽(おかぐら)をやってもらえるということも、初めて知りました。それも、10万円程度から・・・。「神宮でお神楽をしてもらった」というのは参拝者(消費者)にとって相当なステータスになると思われます。そもそも、神宮は古くから「お伊勢参り」という超メジャーなキーワードや「天照大神をおまつりしている」というブランド力を持っているので、それを有効に使う手段はたくさん考えられるはずです。
いずれにしても、旧来の日本的な生活スタイルが変化して長い月日が経つ中で、神社仏閣で行われるさまざまな儀式のメニューを知っている人がずいぶん減っているのだろうと思います。(僕が勉強不足というだけかもしれませんが・・・)マーケティングという観点からすれば、まずは「商品を告知する」というところをもっと充実させるだけでも、ずいぶんと変わるのではないかと思っています。
そんなわけで、おせっかいなコンサルタントの知恵が少しでも役に立てばうれしいと思っているのですが、さて、こういう提案を神宮にしてもよいものかどうか、迷っています。
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